
ブランディングデザインとは?基礎や手順、注意点を初心者向けに解説
小さな会社でマーケティングを担当しているが、自社のブランディングに自信が持てず、どう改善すれば良いかわからない……。そんな悩みを抱えていませんか?ブランディングデザインとは単にロゴを作ることではなく、企業の価値や魅力を一貫した形で伝える重要なプロセスです。本記事では、初心者でも理解できるようブランディングデザインの基礎から実践手順までを解説します。自社らしいブランドを築き、顧客から選ばれる存在になるためのヒントを一緒に見つけていきましょう。この記事を読み終えれば、ブランドの意味と大切さが腑に落ち、明日から実践できる具体的なアクションも見えてくるはずです。
ブランディングデザインとは?
まずはブランディングデザインとは何か、その基本を理解しましょう。ブランディング(ブランド戦略)とデザイン(意匠設計)は混同されがちですが、本質的には異なる概念です。以下で両者の違いと、ブランドアイデンティティを構成する要素、そして近年ブランディングデザインが重視される理由について整理します。
ブランディングとデザインの違いを整理する
ブランディングとは、企業や製品の「らしさ」や価値を戦略的に形作っていく活動です。具体的には、ブランドのビジョンやミッションを定め、ターゲットに伝えたいメッセージや体験を計画することを指します。一方、デザインはそれらの戦略を視覚や体験として具現化する作業です。ロゴやパッケージ、Webサイトのレイアウトから店舗の内装まで、デザインによってブランドの世界観が表現されます。つまり、ブランディングが土台となる考え方であり、デザインはその考えを伝えるための手段と言えます。ブランディングデザインはこの二つを統合し、戦略に沿ったデザインで一貫したブランド体験を生み出す取り組みです。
ブランドアイデンティティを構成する7要素
ブランドアイデンティティとは、ブランドを他と区別する視覚・言語要素の集合です。主な7つの構成要素を確認しましょう。ブランドネーム・タグラインブランドの名称とキャッチフレーズです。覚えやすく、価値を端的に伝えられるものが理想的です。ロゴ企業や商品の象徴となるマークです。一目で認識でき、ブランドの個性や理念を表現したデザインにします。カラー(色使い)ブランドを連想させるテーマカラーです。色は視覚的印象を左右し、ブランドの性格に合うものを選定しましょう。タイポグラフィ(フォント)フォントを含めて読みやすく形を整える技法です。書体の選択もブランドの印象を左右します。ブランドの雰囲気に合ったフォントを選びましょう。グラフィック要素ロゴ以外の図形要素やレイアウトのルールです。定型のアイコンやパターンを決めておくことで、どの媒体でも一貫したビジュアル表現が可能になります。ビジュアルイメージ写真やイラストのスタイルです。扱うビジュアルに統一感を持たせ、ブランドの世界観を一貫して表現します。トーン&マナーコミュニケーション上の言葉遣いや態度です。例えば文章の口調(カジュアルかフォーマルか)や接客時の対応など、接点ごとにぶれない基準を定めます。
以上の要素がしっかり設計されていれば、ユーザーはどのチャネルに触れても「そのブランドらしさ」を感じ取ることができます。
ブランディングデザインが重視される理由
ブランディングデザインが近年とりわけ重要とされるのには、いくつか背景があります。代表的な理由を3つ紹介します。
差別化による選ばれるブランドへモノやサービスがあふれる現代では、商品自体の機能差だけで勝負するのが難しくなっています。他社との差別化には、ブランドの物語や価値観で共感を得ることが不可欠です。優れたブランディングデザインによって独自の個性を打ち出し、顧客から「選ばれるブランド」になることを目指せます。顧客のロイヤルティと信頼の向上単発の取引ではなく長期的なファンを増やすには、ブランドへの愛着や信頼を築く必要があります。統一されたブランドデザインは顧客に安心感を与え、「このブランドが好き」「応援したい」という気持ちを醸成します。また、自社の価値観に共感する顧客は競合ではなく継続的に自社を選んでくれる可能性が高まります。マルチチャネル時代の一貫性Webサイト、SNS、店舗、広告など企業と顧客の接点は多様化しています。このマルチチャネル時代において、どのチャネルでも統一されたブランド体験を提供することが重要です。一貫したデザインと言葉で発信することで、どこで接触した顧客にも同じブランドイメージを想起させることができます。その結果、情報が氾濫する中でも記憶に残りやすく、効率的に認知度を高められます。
ブランディングデザインを成功に導く5つのステップ
では、実際にブランディングデザインを進めるにはどのような手順を踏めば良いでしょうか。基本となる流れを5つのステップに分解して解説します。
市場調査とターゲットペルソナの設定
まず、土台として市場環境の把握と顧客像の明確化を行います。同業他社がどんなブランディングをしているかリサーチし、自社の立ち位置や差別化のポイントを探りましょう。その上で、自社の商品・サービスの典型的な顧客(ペルソナ)を設定します。年齢や性別などの属性だけでなく、ニーズや価値観、ライフスタイルまで具体的に描くことで、狙うべきブランド体験の方向性が見えてきます。市場とターゲットを深く理解することが、全てのデザイン判断の指針となります。
ビジョン・ミッション・バリューを言語化する
次に、ブランドの核となる考え方を明文化しましょう。企業のビジョン(将来像)、ミッション(社会的使命)、バリュー(大切にする価値観)を言語化します。例えば、「◯◯な世界を実現する」というビジョン、「そのために△△を提供する」というミッション、「□を何より重んじる」といった具合です。これらはブランドの軸であり、明文化することで今後のデザインやコミュニケーションの判断基準にもなります。
コンセプト開発とブランドストーリー設計
ビジョンなどが定まったら、それを踏まえてブランドコンセプトとストーリーを作ります。ブランドコンセプトとは、一言で表すブランドの方向性やスローガンのようなものです(例:「毎日に寄り添う◯◯ブランド」)。このコンセプトを軸に、ブランドストーリーを構築しましょう。ブランドストーリーとは、ブランド誕生の背景や提供する価値についての物語です。創業の想いや解決したい課題、そこに込めた情熱などを整理し、顧客に伝わる物語としてまとめます。良いストーリーは顧客の共感を呼び、ブランドに感情移入してもらう強力な武器となります。
ビジュアルアイデンティティの具体化
コンセプトとストーリーが固まったら、それを視覚化する作業に移ります。まずロゴデザインです。ブランドの象徴となるロゴは、コンセプトを反映した形や書体でデザインします。プロのデザイナーに依頼する場合も、事前に自社の理念や希望イメージをしっかり共有しましょう。次にカラーパレットの選定です。ブランドカラー1色だけでなく、メインとサブの組み合わせなど様々な場面で使える色の組み合わせを決めます。さらにフォント(書体)も重要です。和文・欧文それぞれで見出し用と本文用を選び、読みやすさとブランドらしさを両立させます。これらの視覚要素は互いに調和させ、かつ競合とも差別化できるよう意識しましょう。
ブランドガイドライン策定とタッチポイント展開
最後に、定めた要素を継続的に活用するための仕組みを作ります。ブランドガイドラインとは、ロゴの使用ルールや色指定、フォントの規定、トーン&マナーなどブランド表現の基準をまとめたドキュメントです。ガイドラインを策定して共有すれば、誰もが同じ基準でブランドを表現できるようになります。このガイドラインに沿って実際のタッチポイントに展開しましょう。Webサイト、SNSアカウント、商品パッケージ、名刺、店舗看板など、あらゆる顧客接点ごとにデザインを整えます。必要に応じて社内説明会を開くなど、運用体制も整えましょう。
タッチポイント別デザイン実践例
ブランドデザインを具体的に適用する際、タッチポイントごとに気をつけたいポイントがあります。ここでは主要な接点についてデザインのコツを紹介します。
Webサイト・UX/UI(見た目や操作性/ユーザー体験)最適化のチェックリスト
自社のWebサイトはブランドの顔とも言える存在です。以下のチェックリストで、ブランド視点からサイトを見直してみましょう。
●サイト全体でブランドのロゴやカラーが一貫して使用されているか●ターゲットに合わせて使いやすいナビゲーションやUI設計になっているか●コンテンツの文章トーンがブランドの人格に合致しているか●スマートフォンでも見やすいレスポンシブデザインになっているか
上記を満たすことで、ユーザーはWeb上でも違和感なくブランド体験を得られます。
パッケージ・印刷物で世界観を統一するコツ
商品パッケージやパンフレットなどの印刷物でも、ブランドの世界観を表現しましょう。ポイントをいくつか挙げます。
●パッケージにはブランドカラーやロゴを明確に反映させ、店頭でも一目で自社商品とわかるようにする●梱包材やラベルの素材・質感もブランドの価値観に沿ったものを選ぶ●パンフレットや名刺などの印刷物もテンプレートを定めてレイアウトやフォントを統一し、デジタル(Web/SNS)のデザインとズレが生じないようにする
細部に至るまで統一されたデザインを施すことで、顧客は無意識のうちに「しっかりしたブランドだ」という印象を持ってくれます。
SNS/広告クリエイティブで認知を広げる方法
SNS投稿や広告バナーなどのクリエイティブでも、ブランドデザインの力を最大限に活用しましょう。
●SNS投稿のビジュアルにはブランドの世界観を反映させる(フィードの色調や写真のテイストを統一する)●投稿文や広告コピーもブランドのトーン&マナーに沿った言葉遣いに統一する●ハッシュタグやキャンペーンテーマにブランドのメッセージを盛り込み、認知拡大と共感を狙う。また、SNS上でユーザーと積極的に交流し、ブランドストーリーを共有することでファン化を促します
SNSは拡散力が高い反面、プラットフォームごとの文化に合わせた表現も必要ですが、芯となる世界観は統一しましょう。
よくある失敗と回避策
ブランディングデザインの取り組みでは、注意しないと陥りがちな失敗パターンも存在します。ここでは、よくある失敗例とその回避策を紹介します。
ロゴ先行で戦略がぶれるパターン
ブランド戦略を固める前にロゴなど見た目から先に決めてしまい、後から軸のズレが生じるケースです。土台となるブランドの方向性が定まっていない段階でロゴやスローガンを作ると、「想定と違う」と後から修正が必要になることがあります。この失敗を避けるには、まずビジョンやバリューなどブランド戦略を明確に策定し、その戦略を表現する手段としてデザインに取り掛かる順序を守ることが重要です。
社内理解不足による運用崩壊
デザインを整備しても、社内でその意図やルールが共有されていなければ現場で一貫した運用ができずブランドが崩れてしまいます。例えばスタッフが独自に異なるデザインの資料を使ったり、SNS担当がブランドらしくない口調で発信してしまうケースです。防ぐにはガイドラインの配布に加え、社内研修やミーティングで内容を浸透させることが大切です。全員がブランドの担い手だという意識を持ち、統一されたブランド体験を提供できる環境を整えましょう。
KPI未設定で効果検証できないリスク
ブランド施策は短期的に効果が見えづらいため、KPI(重要業績評価指標)を設定せず取り組むと結果が把握できなくなります。例えばロゴ刷新後に認知度がどれだけ向上したか測っていなければ、投資対効果を示せません。この失敗を避けるには、事前に「3ヶ月後に認知度◯%向上」など具体的な目標を決め、施策後にアンケート調査やデータ分析で検証することが重要です。結果を可視化しておけば、成功点・改善点が把握でき、次の戦略に活かせます。
ブランディングデザインを推進するツール・リソース
初心者でもブランディングデザインを進めやすくするために、便利なツールや参考になるリソースを活用しましょう。
オンラインデザインツール(Figma・Canva・AdobeXD)の活用法
Figmaなどのオンラインデザインツールを使えば、チームでUIデザインを試作・共有できます。Canvaならテンプレートを利用して初心者でも簡単にロゴやバナーを作成可能です。これらを活用すれば、スピーディかつ低コストにブランドのビジュアルを整えられるでしょう。
ブランドガイドラインテンプレートの使い方
ブランドガイドラインは、有名企業の公開資料やオンラインの雛形を参考にすると作りやすくなります。テンプレートを使えば、ロゴの使用規定やカラーコード一覧、フォント指定、文章トーンの注意点など必要な要素を漏れなく洗い出せます。後は自社向けにカスタマイズすれば、効率的にガイドラインを整備できるでしょう。
外部パートナー(デザイン会社/コンサル)の選び方
デザイン会社やブランディングコンサルに依頼する場合は、過去の実績や自社業界の経験を確認し、目指すイメージとの相性を見極めましょう。事前の打ち合わせでこちらのビジョンや課題を伝え、的確な提案をしてくれるかも重視すべきです。費用やサポート体制を含め総合的に判断すれば、より自社に合ったパートナーを選べます。適切な外部パートナーから専門支援を得れば、ブランドデザインを一層洗練させられるでしょう。
施策効果を測定する指標と改善フロー
ブランド施策の成果を測定し、改善に活かすことも重要です。ここでは主な指標と改善方法を紹介します。
ブランド認知度・想起率の測定方法
ブランド認知度はターゲット層で自社ブランドを知っている人の割合で、アンケート調査で「◯◯というブランドを知っていますか?」と尋ねて測定します。ブランド想起率は、特定カテゴリで最初に思い浮かぶブランドとして自社が挙がる割合で、「◯◯といえば思い浮かぶブランドは?」と自由回答で質問し、自社名が出た割合を算出します。認知度は接触経験を、想起率は印象の強さを示す指標で、施策の前後でどれだけ変化したかを追うことでブランド浸透度を評価できます。
NPS(顧客ロイヤルティを測る指標)の読み解き方
NPS(ネットプロモータースコア)は顧客のブランドに対する愛着度を測る指標です。「このブランドを他者に薦めたいか」を0〜10点で答えてもらい、点数の高い層の割合から低い層の割合を引いて算出します。スコアが高いほど熱心なファンが多いことを意味します。NPS以外にもリピート購入率や顧客生涯価値(LTV)などでロイヤルティを把握できます。これらを定期的に確認すれば、ブランド施策が顧客の忠誠心向上につながっているか評価できます。
A/Bテストでタッチポイントを最適化する
デザイン改善の際にはA/Bテストで効果を検証しながら進めるのがおすすめです。例えばWebサイトのCTAボタンの色違いA案とB案でクリック率を比較すると、一方のほうが高いといった結果が得られます。このように一度に一要素だけ変更してテストすることで、どの違いがユーザーの反応に影響を与えたのか明確に把握できます。各タッチポイントでこれを繰り返し、定量データに基づいて最適なブランド表現を追求しましょう。
自社らしさを軸に、継続的なブランディングを
ブランディングデザインは、一度作って終わりではなく継続的に磨き続ける経営課題です。自社らしさ(独自の価値観や強み)を軸に、時代や顧客の変化に合わせてブランド体験をアップデートし続けることで、強いブランドが築かれます。
初心者にとって難しく感じるかもしれませんが、基本を押さえてステップを踏めば着実に前進できます。小さなことから実践を始めてみてください。継続的な改善と一貫性の積み重ねにより、あなたのブランドは必ずや独自の輝きを放つようになるでしょう。今日からの実践が未来の強いブランドへの第一歩です。
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